今治市の公文書非開示に対し
情報公開審査請求による口頭意見陳述を行いました

(2018.04.19)

経過のあらまし


加計学園獣医学部との「基本協定書」第13条における公文書が非開示となったことから始まります。

◆ 基本協定書の意味

加計学園の獣医学部(岡山理科大学今治キャンパス)の新設申請が、国家戦略特区諮問会議で2017年1月20日に認可されました。

その認可を受け、今治市は加計学園と<岡山理科大学今治キャンパスに関する基本協定書>(以下<基本協定書>という)及び<解除条件付土地無償譲渡契約書>を交わしました。
(2017.02.13)

<岡山理科大学今治キャンパスに関する基本協定書>
<解除条件付土地無償譲渡契約書>

今治市市議会は、これら<基本協定書>と<譲渡契約書>を承認し(2018.3.3)、これによって<基本協定書>に基づく最大96億円の補助金と土地の無償譲渡が確定され、加計学園は獣医学部建設に突入していきました。この<基本協定書>は、一連の獣医学部開設のための、今治市と加計学園の間の、何よりも重要な契約書なのです。



その13条にはこう書かれています。



以下が、13条に該当する今治市の議決書で、公開済みです。

<今治市大学立地事業費補助金交付決定通知書>
<解除条件付土地無償譲渡契約書>


公文書情報公開請求

私たちは、<基本協定書>における、「13条 学校法人加計学園の議決書」の公開請求をしました。
(2017.11.6)

◆ 公文書非開示決定通知

以下のような、議決書自体を丸ごと非開示とする通知を受け取りました。
(2017.11.20)



開示しない理由を「法人の研究内容や建物、カリキュラム、構想あるいは経営状態等の情報が含まれており、法人の権利や競争上の地位、法人の社会的評価、社会活動の自由その他正当な利益を害するおそれがある。」とし、<今治市情報公開条例>(以下<情報公開条例>とする)第7条3号に該当するとして、議決書自体を丸ごと「非開示」とする決定を行いました。(2017.11.20)

以下が非公開の条件を記した第7条3号です。
非公開には出来ない、ただし書きがあります。


 ◆ 非開示となった公文書

 ………………………………………
<基本協定書>13条に該当するとされる、加計学園の議決書は<基本協定書>第3条

「加計学園が理事会において議決を要する事項として想定されるものは、学部認可(基本協定書第3条)である。これらの事項を議決した加計学園理事会議決書には、今治において新設を予定している獣医学部に関しての研究内容や建物、カリキュラム、構想、経営状態等の情報が記載されている。」

「文科大臣による学部設置認可」が下りるためには、大学の施設運営のための費用の担保が必須であるが、その確認のためには、<基本協定書>第4条及び同第5条に基づく今治市議会議決書を要する「土地の無償譲渡」及び「補助金」事項に関して、加計学園理事会の、受領するとの議決がなければならない。
(以前の公開質問等による回答から得た情報による)
………………………………………

情報公開不服審査請求

私たちは、以下の理由により、公文書非開示決定処分を不服として「審査請求」を行いました。
(2017.12.7)

「情報公開・審査請求制度」の活用(図式↓pdf)


<公文書非開示決定処分についての審査請求書>



市からの弁明書が届く

それに対し、市から以下の弁明書(反論)が届きました。
(2018.01.18)
<議決書非開示に関する審査請求に対する市の弁明書>





弁明書への反論を提出

この今治市の<議決書非開示に関する審査請求への弁明書>(以下<弁明書>という)に対し、私たちは反論書を提出しました。
(2018.02.28)

<反論書>
 私たちの反論の根拠となる条例は以下です。
<今治市情報公開条例>
<今治市情報公開条例逐条解説>


◆ 公開の基準となる<今治市情報公開条例>及び<逐条解説>

目的 第1条 「この条例は、住民自治の理念にのっとり、公文書の開示を請求する権利を定めることにより、市政運営の公開性の向上を図り、もって市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにし、市民の信頼と市政参加の充実に資することを目的とする」<今治市情報公開条例>

公文書の開示義務 第7条 「実施機関は、開示請求があったときは、開示請求に係る公文書に次の各号のいずれかに掲げる情報(以下「非開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該公文書の開示をしなければならない。」<今治市情報公開条例>

適正判断 「公にすることにより法人等又は個人の正当な利益を害するおそれがある情報」であるか否かの判断を・・・「当該法人等と行政との関係や当該法人等の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性等それぞれの法人等及び情報の性格に応じて適正に判断する必要がある」<逐条解説26頁>

判断基準 「ただし書は、法人等又は個人の事業活動によって危害(公害、薬害等)が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、危害の未然防止、拡大防止又は再発防止を図り、その危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報は開示することを定めたものである。この場合、現実に危害が発生している場合のほか、その発生の蓋然性が高い場合も含まれ、その事業活動が違法又は不当であるか否かを問わない。
 「公にすることが必要であると認められる情報」に該当するかどうかについては、非開示とすることにより保護される法益と開示することにより保護される利益を比較衝量して判断することになる。この比較衝量に際しては、開示することにより保護される利益の性質及び内容を踏まえる必要があり、特に、人の生活又は財産を保護する必要性の判断に当たっては、その侵害の内容、程度と保護の必要性を十分に検討する必要がある」<逐条解説27頁>
 
◆ <反論書>の要旨

「加計学園理事会議決書」が非開示情報ではあり得ない

「議決書」に記載されている「獣医学部に関しての研究内容や建物、カリキュラム」が示す加計学園の事業活動の中には、<情報公開条例>第7条第3号の「ただし書」に該当する「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」が含まれている可能性が極めて高い。

加計学園事業活動には、市民の生命などに直結する情報が含まれている

企画課が「今治において新設を予定している獣医学部に関しての研究内容や建物、カリキュラム、構想、経営状態等の情報が記載されている」と認めた「議決書」は、「研究内容や建物」としての「BSL3施設」とその「稼働」の情報が含まれている可能性を示唆している。
加計獣医学部開学後のBSL3施設の稼働は、様々な事故(災害、運用、ミスなど)を想定する必要があり、BSL3施設の稼働は、今治市民の生命、健康、生活に直結する問題となる。

請求人は、「BSL施設の稼動やのまうまの参加型臨床自習に関する情報は、一切記載されていない」との処分庁の主張が妥当であるか否かを判断する具体的な証拠を前述の理由により入手できず、客観的な事実に基づく反論などを行うことを可能とする環境を違法に奪われたために「当該議事録を開示することが人の生命、健康又は生活を保護するため必要な情報となるものではない。」との処分庁の一方的な主張をも検証できない状況に置かれている。

今治市民の利益と加計学園の法益の比較衡量

今治市指定文化財・天然記念物である「野間馬」は、今治市の財産である。
また、今治キャンパス用地を加計学園に「解除条件付土地無償譲渡」する契約を締結したが、土地の名義変更は、当該請求時点では行われておらず、名義は、今治市のままである。
また、今治キャンパス用地は、「解除条件付土地無償譲渡」であるから、将来今治市に引き渡される可能性がある。解除条件付土地無償譲渡契約書に「ただし、甲が特に認めた物については、原状の回復をしないことができる」とある。すると、加計獣医学部開学後のBSL3施設の稼働による何らかの事故により、病原菌などが漏れ、今治キャンパス用地が汚染されたまま引き渡される可能性が否定できない。
また、「議決書」は、「研究内容や建物」として「BSL3施設」とその「稼働」の情報が含まれている可能性を示唆しているのであるから、前述のように何らかの事故により、病原菌などが漏れて風に乗って飛散されると市民の財産(例えば、土地建物・農作物)の財産的価値が低くなることが想定される。
したがって、「議決書」には「公有財産のような市の財産が含まれるものではない」にはあたらない。
今治市は、「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護する」責務を負っている。したがって、非開示とすることにより保護される加計学園の法益よりも、開示することによる今治市民の生命などの保護を優先する義務を負う。

また、「公にすることにより法人等又は個人の正当な利益を害するおそれがある情報」であるか否かの判断を「当該法人等と行政との関係」を考慮する必要がある。つまり、基本協定書第4条に基づく「今治キャンバス」の土地を無償譲渡、同第5条に基づき「今治キャンパス開設事業に対し補助金」を交付との関係から、社会通念上、信義誠実の原則に基づき、今治市民の利益を優先する道義上の義務が生じ、仮に加計学園の法益が損なわれることが予想されても、「議決書」の開示を行うべきである。

「開示・非開示は、あくまで条例に基づき判断されるという情報公開制度の趣旨を逸脱した考えである。」と弁明するが、「当該法人等と行政との関係」を考慮する必要があるが、どのように考慮したのか、「対象となる文書に人の生命、健康、生活又は財産に関する情報は含まれておらず」とあるが、この点は、前述のように、そのまま鵜呑みにできない。

「記載部分の区分けが困難な場合等」ではない

今治市は、部分公開は「非開示情報とそうでない情報が入り混じっている場合」であり、「加計学園理事会議決書は、その全てが条例第7条第3号の非開示情報に該当する」という。
その具体的な理由は、一切示していない。非開示と出来るのは、「公文書のどの部分に非開示情報が記録されているかという記載部分の区分けが困難な場合」に限定されるのだが、前述のように「議決書」は、契約上の書類であるから、後日の争いや認識の齟齬などを避けるために、区分けなどが明確になされる必要がある。したがって、「議決書」が、「公文書のどの部分に非開示情報が記録されているかという記載部分の区分けが困難な場合」に該当するはずがなく、それを理由に非開示とすることは許されない。したがって、非開示情報に該当する情報があれば、その情報部分を「マジック等で塗りつぶしたものを複写したもの又は非開示部分を覆って複写したものを部分開示する」ことが不可欠である。
もし、表題や、日時すらも部分公開できないような議決書であれば、公文書として効力を持ちえるものではないという事になる。

以上

対審式の口頭意見陳述

審査請求における、公文書非公開に対する市側の弁明書への上記の私たちの反論書提出を受けて、
2018年4月19日、対審式の口頭意見陳述が行われました。

この口頭意見陳述では、処分庁(企画課)は、対面で私たちの質問に対して返事をすることが要求されるのです。

その報告は、口頭意見陳述後に、今治記者クラブでの記者会見で行いました。

内容は、後日整理し、報告いたします。

(今治市民ネットワーク)